FUTURE 明日への挑戦

FUTURE明日への挑戦

創業満100年記念座談会

当社の将来を展望して

創業満100年を迎えるにあたって当社では、
「上田八木短資の10年先を展望した提言案」というテーマで、広く社員から事業提案の募集をした。
新規事業の提案、事務合理化や勤務環境の改善、さらに会社のイメージアップにつながる数多くの提案があり、
その中から秀でた提案をした3名を選び表彰した。
この座談会では、上田社長と、受賞した3名の社員に出席していただき、
現在取り組んでいる業務の話から、将来に向けての、決意、思いについて語っていただいた。

TALK 01

上田八木短資を選んだ理由は?

まず最初に、皆さんはどんな理由から上田八木短資に入社したのでしょうか。そして入社した後で、印象が違っていたということはありましたか。

私は自分の力が発揮できる少人数の会社を受けようと決めていて、その中でも、より金融の制度に関わる仕事がしたいと思っていました。実際に多くの会社の説明会に参加しましたが、当社では社長自らが学生に対して会社のビジョンを語っていて、若手の人材に対する意識が高い会社だと感じたことがこの会社を選んだ大きな理由です。入社して驚いたのは、新人研修で社内の全ての部署をまわらせていただいたのです が、想像以上に多様な商品を扱い、多様な取引を行っていたことです。そこが、入社前と印象が大きく違っていたところです。アメーバーのような会社だなとそのとき感じました。

アメーバーというのは面白い表現だね。柔軟で、世の中の変化に合わせて形を変えていく、いろいろなことを取り込んでいく。そのことが会社が生き残っていくことにつながっているわけだから、アメーバーというのは言い得て妙だね。会社の雰囲気についてはどう?入る前と後では違いがありましたか。

内定をいただいた後に全社員とOBの懇親の場である「廿日会」に参加させていただきました。そこで社員の皆さんと話をさせていただいたのですが、すごく面白い方が多い会社だと思いました。冗談もうまく、会の盛り上げ方も心得ていて、この面白い人たちの中で自分は埋もれないようにできるのかなと、ちょっと不安になったことを覚えています。

私たちの会社は、お客さんと直接コミュニケーションをとりながら仕事していくのが仕事ですから、そうした能力にたけた人が多いかもしれないね。山下さんもきっと先輩たちのようになるよ。さて、上条さんは入社3年目で、いろいろ慣れてきたと思うけど、上条さんがこの会社を選んだ理由は何ですか。

実は私は大学を1年間留年して入社したのですが、面接では、なぜ留年したのか、何がやりたくて留年したのか、どういう動機でここにいるのかという話を、とても親身になって聞いてくれました。現場の方の面接でも、部長級の方の面接でも、丁寧に話を聞いてくれたことが嬉しくて、まさにこうした会社の雰囲気が自分の求めていたものだと思いました。

3年たった現在はどうですか。自分の意見をしっかり聞いてもらっていますか。聞いてもらえないということはないでしょうね。

聞いてはもらえます(笑)。意見が形にならない場合もありますが、論理立てた話であり、納得がいく説明であれば必ず聞いてくれます。

これからも頑張ってください!さて、辰巳さんは中途の採用ですが、こちらに来る前に勤められていた会社は上田八木短資の取引先でしたよね。外から見ていて、この会社をどんな会社だと思っていましたか。

私は、上田八木短資という会社は、機を見て動くのがとても上手な会社という印象を持っていました。そしてそういうことが上手にできるということは、オープンで風通しのいい会社なんだろうな、と想像していました。縁があって入社させていただいたわけですが、入社後一緒に働いて、やはり思っていた通り、想像していた通りの会社、という印象です。

辰巳さんが外の会社にいたときに上田八木短資を見ていて、こういうところをもっとこうしたらいいのにと思うようなことはありましたか。

先ほどのアメーバーの話につながるんですけれども、外にいたときにはもっと大胆に形を変えられるんだろうなぁ、と思っていました。たとえばですが、ロンドンの金融ブローカーでマン・グループという会社があるんですけれども、ここは2000年のころには、それまでの金融ブローカーから、全く違うヘッジファンドの会社に変貌を遂げました。あまりの変わり身の早さが業界では大きな話題になったものでした。まぁここまでの変化は世界的に見ても稀な例で、日本では難しいだろうとは思いつつも、日本でチャレンジするなら、上田八木短資だろうなぁ、と当時は思っていました。実際に会社に入ってから感じるのは、会社の形をそこまで変える必要はなく、オープンで風通しの良い会社なら、ちゃんと時代の流れには巡航速度で対応していけるということです。

TALK 02

日々の業務での課題と取り組み

皆さんが毎日の業務を通して課題として感じることはどんなことでしょうか。山下さんはどうですか。

私がいる部署はベテランの方が多いので、お客様に対する所作ですとか、言葉の使い方などを厳しく指導されているところです。皆さん、長年の職場経験の中で自分のスタイルを確立された方が集まって、ひとつの分業体制になっているので、そこを自分たち若手がどうやって吸収していくかということが課題だと思います。自分と、自分の1年下の人間が全く同じ成果を出せるような仕組みをつくっていくとか、自分が5年、10年とかけて学んでいくようなことを1年のパッケージで伝えていけるような仕組みとか、そういったことが今後は必要になるのではと思っています。

それはなかなか深い課題ですね。我々の業務部でも同じで、係ごとだったり、やっている人ごとだったりで違いは色濃く出てきます。どうしても少人数の会社なのでそういうきらいがあるのだと思います。どういうことかというと、大きい会社であればチームで戦えるけど、小さい会社の場合はどうしても個人の力がフォーカスされるからだと考えます。上田八木短資がお付き合いさせていただいている会社は日本を代表する金融機関の方たちですので、そうした方々に対してどういうふうな受け答えをするか、ということを考えると、一人ひとりがきちんと専門家としてトップレベルの知識を持っていることは当然として、きちんとした所作や立ち居振る舞いも必要だからです。

多くの商品を扱っていて、量もかなりある、でも人数が少ないとなると一人ひとりの守備範囲は広くなる。そこをどう共有できるかということですね。

できる限り標準化して、誰でもできるようにすれば、コストも時間もどんどん削減できます。その余った時間や資金を使って新しいことに挑戦していく必要があると思っています。

今後に向けて全社的に取り組まなければならない課題ですね。上条さんは、何か個人的にこんなことにチャレンジしました、ということはありましたか。

私は日本国債の貸借の仕事をしているのですが、今年の5月から国債取引の決済に関する制度が大きく変わります。その対策として、上司から制度変更についての勉強会用の資料をつくってみろと指示を受けました。入社2 年目のころです。正直足元の仕事も完璧にできていないのに、誰もわからないことについて新しく勉強してみろと言われて、自分に果たしてできるのかと思いました。でも、誰もわからないということは、もしかしたら本気で勉強すれば入社3年目という若手にも関わらず業界でも相当詳しいほうの人間になれるのではと考え、資料づくりに一生懸命取り組みました。辰巳さんをはじめ、実際に国債取引のバックアップをしていただいている皆さんには及ばないかもしれませんが、お客さんと直接話をするフロントの人間の中では、制度変更や契約内容にかなり詳しくなれたかなと思います。社内外でも自信を持って説明できますし、本気で勉強してよかったと思っています。

とてもいい話ですね。会社に入った後でその人が成長できるかどうかというのは、その後の勉強なんですね。前向きにいろいろなことを吸収していく姿勢です。でもそれは別に若い人だけの特権ではなく、歳を重ねてからでもいくらでもできます。それをする人としない人では、10年後、20年後に大きな違いが出てきます。自分の専門分野に対して誰にも負けないというくらいの自信をつけるために、常にいろいろ新しい知識を吸収していくこと。ぜひこれからも続けてほしいと思います。そうしたら、すぐに私なんか追いこされてしまいますよ。

今回の国債制度の変更について言えば、決済期間がこれまでの2日から1日に短縮されることになるわけです。これまで2日間の余裕があったところを半分の1日で行うようにするためには、バック事務をやっている私の部署の女性社員の皆さんに相当な負担をかけることになるわけですが、そこはやり方を大きく変えるなどして対応する必要があるわけです。

そうした制度変更にきちんと対応できる事務を構築することはとても重要なことです。当社の仕事は 正確であることは当然のことで、それに加えて迅速でなければなりません。ただこれからはやり方そのもの、たとえばAIの導入なども含めて大きな変革が大切になってきます。これまでにない新しい発想が当然必要になってきます。辰巳さんには今年シアトルに出張してもらって、AIの最前線を見てきてもらいました。何か印象に残っていることはありますか。

シアトルは、マイクロソフトとアマゾンの本社がある都市として有名で、シリコンバレーに次ぐIT関連の小さなベンチャー企業がたくさん集まっている地域です。今回、そうした会社を訪問して、一番驚きだったのは、今までは人間がフェイス・トゥ・フェイスで応答していたことが、コンピューターでも普通に、しかもほとんど全部を片づけられるレベルまで技術が上がっているということでした。自動運転の技術と同じようにコミュニケーションにおいても、そういう状況が目の前に迫って来ているのです。「自然言語認識」 という分野になるそうですが、人間が喋ったり書いた文章を正確に認識して、正確に応対することがかなりのレベルまで進化していて、実用化が少なくとも英語での利用においては限りなく近づいているということでした。日本語の場合は、もう少し実用化まで時間がかかりそうだという話も聞きましたが、でも、もし実用化されるとすると、たとえば上条さんがお客さんとしゃべるようなことも、もしかしたら上条さんでなくてコンピューターでもいいじゃないかということにもなりかねません。そういう将来を想像して、AIの時代が来たときに人間は何をすればいいのかということを考えさせられた視察になりました。

我々の業界だけの話ではなく、多くの仕事が置き換わる可能性はありますね。今回辰巳さんは視察に行っていろいろなことを体験してこられました。そういうことは社員みんなが共有できないといけませんね。幸い我々は小さい会社なので、そうした共有がと てもしやすいと思います。それによって新しい発想が出てくるだろうし、新しい対処の仕方もあります。私が常に皆さんに言っているのは、情報のアンテナを高く持ってほしいということです。150人の社員がアンテナを持っていてその情報を共有化できれば、150のアンテナというふうにすごい数が広がっていきます。それだけでもこの会社の大きなパワーになるはずです。

TALK 03

それぞれが考える
10年後の上田八木短資

皆さんは10年後にこの会社はどうなっていると思いますか。山下さん、アメーバー化は進んでいるでしょうか。

進んでいると思いますし、そうなっていてほしいです。変化があって、どんどん仕事の内容がアップデートされて、顧客のニーズをキャッチアップしていくような仕事は単純に面白いと思いますし、そういった仕事に携わる機会がほしいとも思います。

会社の中の業務がどうなっていようと、人がどうなっていようと、これまで同様、時代の変化に一歩先んじる会社であり続ければと思っています。先んじるためには、この先何が起こるか想像できないといけませんし、想像するための下地としての知識が必要なのではと思います。その点で、まず個人として先を見据えられる人間に成長していきたいと考えています。

私はやはりバック事務の担当ですので、10年後に山下さんや上条さんたち若い人たちが何か挑戦したいというときに、そういった挑戦を受け止められるような環境づくり、その準備を確実にしておきたいと思っています。若い社員の人たちが10年後に中堅となって、さあこれからというときに、バックが付いてこれないということがないように、しっかり準備をし、体制を整えたいと思っています。

TALK 04

提言案を募集した理由

なぜ提言の募集を行ったかというと、アメーバーという言葉にも表れている通り、金融を取り巻く環境が大きく変化していく中で、当社は環境変化に先んじて次々に新しいことに挑戦していかなければいけない。

過去を振り返ってみると、この会社は100年前にコール取引の専業で設立しました。しかし今や 我々の収入の中に占めるコールの仲介手数料というのは20%でしかありません。では残りの80%は何かといえば、この30年で新たに始めたビジネスでの収入です。コマーシャルペーパーの取り扱いをほぼ30年前に始めました。国債貸借取引である債券レポや株券レポに取り組んだのが約20年前、そして近年収益力をつけてきた上田八木証券の創立が10年ほど前です。だからほぼ10年単位で何か新しいことを始めて、モノにしてきました。次の10年そして20年後のことを考えると、今踏み出しておかないといけないわけです。

また、募集を通して、新しい発想で物事にチャレンジして、それを収益化していこうという社員一人ひとりのモチベーションも育んでいきたいと考えました。今回皆さんの提案を審査させていただきましたが、たとえば辰巳さんが挙げてくれた業務の効率化は、まさに既存業務の中でのさらなる効率化であり、それを競争力の強化につなげていくという、そういう視点での提案で、非常に実務的で実現性の高いということで評価をしました。山下さんと上条さんが提案してくれたのは今はまだやっていない、もしくはできそうなんだけれどもまだそこまでは踏み出していない、おそらく将来の金融ビジネスにおいては必要になるだろうという、そういう視点での提案です。

そうした新しい発想であるとか新しいことにチャレンジしていこうという気持ちが提言に非常によく表れているということで評価をさせていただきました。当然既存業務の競争力強化というのはコアとしてあるわけですが、今回のような提案があれば、3年後、そして10年、20年後になったときに、今やっているビジネスが20%になっても、残りの80%を新たなビジネスで収益を伸ばしていけるんだという希望が見えてきました。

新しいことにチャレンジするといっても、非常に競争の激しい世界ですから、競争に打ち勝つということは絶対必要で、そのためには今この会社が持っている強みを生かしていかなくてはいけません。皆さんがその気になれば30年、40年と勤めていただける会社ですから、必ず収益の柱、新しいビジネスの柱になるようなものがたくさん育っていると思います。ぜひそういう種まきを一緒に手伝ってほしいと考えています。

上田八木短資株式会社 おかげさまで満100年 新たなステップへ